フィンチューブ式熱交換器とヒートシンクの基本
加熱、冷却、蒸発、冷蔵・冷凍など様々な用途で熱交換器が用いられています。その中で空調設備・機器から発生する熱を室内や大気中に放熱する用途で用いられている熱交換器が「フィン」で、その代表が「フィンチューブ式熱交換器」です。フィンは産業・民生部門の幅広い放熱用途で用いられています。
フィンとは
熱交換器におけるフィンとは、伝熱面積を広げるために突起状に成型した放熱板です。「放熱フィン」もしくは「ヒートシンク」とも呼ばれます。伝熱面積を広げることで高効率の熱交換を図る部品となります。
フィンを利用した熱交換器としては「フィンチューブ式熱交換器」がある他、ヒートシンク自体を放熱器として扱うケースもあります。
フィンチューブ式熱交換器とは
フィンチューブ式熱交換器とは、液体と気体を熱交換する熱交換器です。具体的には伝熱管内に液体を流し、伝熱管外側の気体と熱交換します。伝熱管の内側に放熱板を取り付けた単純な構造なので、空調設備・機器の放熱用途に合わせた設計が可能で、多管式に比べ伝熱効率が高いので筐体を小型化できる特徴があります。
フィンチューブ式は主に液体to気体、気体to気体の熱交換に用いられ、「エロフィンチューブ型」と「プレートフィンチューブ型」に分類されます。
エロフィンチューブ型
伝熱管の外側に帯状の放熱板を螺旋状に巻き付け、伝熱面積を拡張したタイプです。伝熱管内に蒸気、冷温水、伝熱媒体などの熱源を流し、伝熱管外側の空気と熱交換をします。風量が少ない自然送風の放熱に適しています。また伝熱管と放熱板の密着度が強いので、高効率の伝熱が得られます。
プレートフィンチューブ型
伝熱管の内側に薄板状の放熱板を取り付けたタイプです。エアコン室外機の熱交換器がこのタイプの代表と言えます。伝熱管内に液体を流し、伝熱管外側の空気と熱交換をします。小型ファンなどで常時送風できる環境下の放熱に適しており、エロフィンチューブ型よりも小型化できます。また液体to気体の熱交換では高効率の伝熱が得られます。このため蒸気による空気加熱、廃熱回収による温水製造、冷却水による気体凝縮などの用途に広く用いられています。
ヒートシンクの基本
ヒートシンクとは、ヒレ構造の突起物を設けた部品のことです。主に電子部品の放熱用途で使用されるので、一般には「放熱器」と呼ばれています。また電子部品から発生する熱を空中に放出するため、電子部品と放熱器はユニット構造になっています。
電子部品に電流が流れると、熱が発生します。そして電子部品内の接合部温度(ジャンクション温度)が許容範囲を超えると熱歪みが生じ、電子部品の機能劣化や故障の要因になります。これを避けるために、電子部品が帯びた熱は速やかに除去する必要があり、その役割を電子部品にユニットで取り付けられているヒートシンク、すなわち放熱器が果たしています。
ヒートシンクの放熱の仕組み
熱は物理的に、以下のいずれかの方法で伝わります。
熱伝導……………分子間の振動や自由電子による熱移動現象
熱伝達(対流)…固体から流体に伝わった熱が、流体の移動により熱も移動する現象
熱放射(輻射)…固体の熱が電磁波により放射される熱移動現象
電子部品の場合は電流(熱源)により発生した熱が熱伝導により電子部品のカバーに伝わり、そこから周囲の空気へ伝わります。この時、電子部品を熱から守るためには、電流により発生した熱をヒートシンクに伝熱させれば、放熱を迅速化できます。
さらにヒートシンクの表面積が広いほど放熱がスピードアップします。このためヒートシンクにはヒレ構造が採用されています。なおヒートシンクの材質としては、熱伝導性が高い銅とアルミニウムが主に使用されています。
ヒートシンクの性能指標
ヒートシンクの性能は、その指標として一般に「熱抵抗値(℃/W)」が用いられます。熱抵抗値は値が小さいほど高性能なヒートシンクを示します。ヒートシンクは表面積が大きいほど熱抵抗値が小さくなり、熱抵抗が小さいほど放熱器から空気中に放熱される熱量が増加します。
例えばある電子部品に許容される上限温度が120℃、周囲温度が40℃の場合、その差は80℃になります。そして電子部品自体の発熱量が25Wの場合、当該ヒートシンクに求められる熱抵抗は「80℃÷25W=3.2℃/W」となり、これが当該ヒートシンクの熱抵抗値になります。
ヒートシンクの分類
ヒートシンクは、放熱法の違いにより次の3タイプに分類されます。電子部品の場合は一般に「自然空冷型」と「強制空冷型」が用いられています。
(1)自然空冷型
自然発生の対流により放熱するタイプです。ファンで強制的に送風しなくても、放熱器の温度が電子部品の周囲温度より高温になると、放熱器の周りの空気が上昇して軽くなるので対流が自然発生し、電子部品の周囲熱を放熱します。
(2)強制空冷型
ファンで対流を発生させて放熱するタイプです。自然空冷に比べ放熱量が倍以上に増加するので、放熱器の小型化が可能です。
(3)強制液冷型
冷却水や冷媒が循環するチューブを放熱対象物に取り付けて放熱するタイプです。放熱量は強制空冷よりさらに倍増します。主にデータセンター、サーバルームなどのCPU(中央演算処理装置)のヒートシンクに用いられています。
なおヒートシンクは、製造法によっても次の3タイプに分類されます。
押出し型…………………アルミなどの金属を押し出してシートシンクを成型するタイプ
ダイカスト型……………金型に溶融した金属を圧入してヒートシンクを成型するタイプ
ヒートパイプ埋込み型…冷却水や冷媒が循環する微細チューブを束ねて成型するタイプ
このうち最も製造コストが安いのは成型が簡単な押出し型です。ダイカスト型は金型製作にコストがかかりますが量産が容易です。ヒートパイプ埋込み型は成型が複雑なので最もコストがかかりますが、放熱性能が一番優れているので、データセンターやサーバルームに設置するコンピュータの必須ヒートシンクになっているようです。
フィンチューブ式熱交換器、ヒートシンクの製品
ここではフィンチューブ式交換機とヒートシンクの製品をピックアップして紹介します。
プレートフィンクーラー
本製品は伝熱管内に冷却水や冷媒を流し、伝熱管外側の空気を冷却するための熱交換器です。筐体は水路や水室を形成するためのU字管、管束、伝熱管をそれぞれの材質に適したレーザ溶接で取り付け、鋼板製ダクト型ケーシング内に格納しています。
■特徴
あらゆる環境の冷却・除湿に対応
顧客の機器に合わせたカスタマイズ設計が可能
加熱・乾燥装置用エロフィンヒーター
本製品は気体の加熱を目的としたエロフィンチューブ型の熱交換器で、空調機、乾燥機などに組み込んで使用します。筐体はエロフィンチューブ複数本を管束にレーザ溶接で取付け、鋼板製ダクト内に格納しています。
■特徴
フィンビッチは3.0mmより設定可能
エロフィンチューブは亜鉛・錫メッキの加工が可能
エロフィンチューブ(フィン付放熱管)
本製品はフィンを伝熱管の外側に完全密着で取り付けており、一体構造と同等の伝熱効率を実現しています。伝熱管の外径・長さ、フィンの幅・ピッチは顧客の用途に合わせたカスタマイズが可能です。伝熱管とフィンも、ステンレス・鉄・銅を組み合わせた巻付け加工が可能です。食器・容器の高温加熱殺菌機、農作物栽培用ビニールハウスの暖房機、屋内型植物園の暖房機などの付属装置として広く使用されています。
■特徴
従来製品に比べフィン密着度、フィンピッチ精度、耐衝撃性などを向上
標準規格に加え用途に合わせた規格外の伝熱管径、フィン幅、フィンピッチ幅などの製作も可能
LSI用ヒートシンク
本製品はますます高速化するCPUからの発生熱を、よりコンパクトなスペースで放熱するために開発されたヒートシンクです。
■特徴
放熱部にスリット加工を施して角ピン形状のフィンを実現。これにより放熱板の表面積が大幅に増加。コンパクトな放熱板ながら熱抵抗値を最小化
H・W・L各寸法と角ピン寸法を自由設定できるので、ヒートシンク設計時におけるスペースの課題を解決
まとめ
放熱フィンは、一般ユーザの目に留まることがないのでメディアに露出する機会もほとんどありません。しかし産業・民生部門の装置・機器の開発・製造においては非常に重要であり、私たちの生活を支えていると言ってもよいでしょう。