蒸気配管の設計に際して考慮する点とは?必須の装置についても解説
蒸気配管とは、蒸気を流すために設置する配管のことです。空気中の湿度を移動させる全熱交換器にとって、蒸気配管は欠かせない装置です。
しかし、蒸気配管の設置にかかる設計はむずかしく、さまざまな要素を加味して決定しなければなりません。蒸気配管の設計を誤ると機器の機能を低下させるほか、故障や機器の寿命を縮める原因になります。
そこでこの記事では、蒸気配管の設計を正しくおこなうために考慮すべき項目や具体的な装置について解説します。
蒸気配管を設計する際に検討すべき項目
蒸気配管を設計する際には、次の点を考慮する必要があります。
- 蒸気配管の種類
- 蒸気配管の口径
- 蒸気配管の経路設計
- ドレン抜きする箇所
- 蒸気の不純物の除去方法
- 断熱と保温の方法
蒸気は温度と圧力を伴います。そのため内部にドレンや不純物が堆積しないよう、温度や熱が変動しないように、蒸気配管の選定から配管の設置位置、配管の勾配といった要素を緻密に計算して、設計の仕方を決定しなければなりません。
また蒸気を効率的に使用するためには、ドレン抜きや蒸気内の不純物を除去する方法を取り入れることや蒸気温を一定に維持するための装置の選定、適切な箇所への設置に関する設計も必要です。
ドレンとは
蒸気配管設備に関連して使われるドレンとは、気体である蒸気が液体に変化したものです。
全熱交換器の場合、空気中の湿度(蒸気)を移動させる際や、蒸気配管内を移動する際にドレンが発生します。
ドレンは水ですので取り除かないで蒸気配管内に放置すると蒸気温を下げるだけでなく、機器が故障する原因にもなります。そのため、蒸気配管の設計においてはドレンを排出する装置を設置することは欠かせません。
蒸気配管の設計が重要な理由
蒸気配管の設計にあたっては、さまざまな工夫が欠かせません。蒸気配管の設定が適切にできていない場合、次のような事態を引き起こします。
- 蒸気の温度が下がる
- 蒸気の圧力が低下しすぎる
- 機器の故障
- 機器の寿命が縮まる
- 事故
蒸気は高温で圧力も伴います。蒸気を移動させる蒸気配管の設計に際しては、細心の注意と豊富な知識や経験が欠かせません。
併せて万が一の事故の危険を回避するために国土交通省が定める公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)[1] や文部科学省の定める機械設備工事標準仕様書[2] の内容を遵守していることも大切です。
蒸気配管の種類
蒸気配管を通る蒸気は圧力を持っており、かつ高温になることがあります。そのため蒸気配管の設計において配管材料を選定する際には、耐圧性能と耐熱性能を考慮しなければなりません。
高圧に耐え、100度を超える温度にも耐えられる素材として蒸気配管に使用されるのが、次の3種類です。
- SGP
- STPG
- ステンレス
蒸気配管の種類と特徴
種類 | 正式名称 | 特徴 |
SGP管(ガス管、黒管) | 配管用炭素鋼管 | 蒸気圧力1MapG以下の低圧で使用 |
STPG管(スケジュール管) | 圧力配管用炭素鋼管 | 蒸気圧力1MapG以上の高圧で使用同じ径で肉厚の異なる種類がある肉厚はSch(スケジュール)の番号で示され、番号が大きいほど肉厚になる |
ステンレス管 | 配管用ステンレス鋼管 | 耐食性に優れる材質、肉厚、規格で様々な種類がある肉厚はSchの番号でも示され、番号が大きいほど肉厚他に比べて高価 |
なお亜鉛メッキ管(通称、白管)は、蒸気配管には使用しません。亜鉛でメッキしているため、使用に伴いメッキが剥げ、内部に詰まる可能性があるためです。
蒸気配管の口径
蒸気配管の口径とは、管の太さのことです。蒸気配管の口径は全熱交換器をはじめとする機能の性能や寿命、設置コストに影響するため、綿密な計算をもとに選定しなければばりません。
一般的に蒸気は以下の口径は、蒸気流速の平均値が30メートル/秒となるように選定します。
高い圧力を維持するためには、口径の大きな蒸気配管を選択することが理想です。しかし大きすぎる、もしくは小さすぎる口径の蒸気配管を設置すると、機器の機能に支障をきたす可能性があります。
例えば口径が小さい場合、流速が早くなります。これによって次のような問題が発生します。
- 蒸気配管が摩耗しやすくなる
- 蒸気が配管内で激しく振動することによる騒音
- 圧力が下がり装置の駆動に差し障りが生じる
一方で大きすぎる蒸気配管を設置する場合は、圧力が下がることはありません。しかし次のような問題が発生します。
- 蒸気の温度の低下
- 装置の正常な運転に支障をきたす
- 配管工事のコストが高くなる
適切な蒸気配管の口径を導き出すために必要な蒸気流速や蒸気の圧力を算出するには、専門的な知識に基づいた計算が必要です。蒸気配管設計時の勾配や蒸気配管の長さも考慮して包括的に算定しなければなりません。
機器を安全に長く使用するためには、蒸気配管の設計は、経験値を数多く積んだ熟練した技術者に依頼することが大切です。
蒸気配管の設計に欠かせない装置
蒸気配管の設計をする際は、次の機器の設置が欠かせません。
- スチームトラップ
- 減圧弁
- ストレーナー
- 保温・板金工事
スチームトラップ
スチームトラップは、配管内に発生するドレンを取り除くために必須の装置です。蒸気配管から蒸気は漏らさず、ドレンだけを取り除くことができる自動弁の一種です。
スチームトラップの設置によって期待できる効果には、次のようなものがあります。
- 熱効率低下の防止
- 配管内の腐食の防止
- 機器の故障の防止
- 騒音防止
蒸気配管内のドレンを取り除くことで、熱交換器に水が溜まることによる熱交換率の低下を防止できます。また全熱交換器本体の故障や、配管内が腐食するのを防ぐことも可能です。
全熱交換器の機能を維持するために、スチームトラップの設置は重要です。
しかし、スチームトラップは適切な箇所に設置しないと十分機能を発揮できません。配管の長さや勾配、蒸気流速や圧力も考慮しながら、スチームストラップの設置位置を設計する必要があります。
減圧弁
減圧弁は、蒸気配管内の各装置に設置する必要があります。高圧で各装置に届いた蒸気の圧力を一定値まで下げて、配管内の蒸気の圧力を一定に保つために必要です。
蒸気配管内の圧力を保つ装置は減圧弁以外にもあります。しかし減圧弁は動力を伴わず、自動で圧力の調整ができる装置です。また蒸気が高圧になっているときに速やかに作動して、減圧できる特徴があります。
ストレーナー
蒸気内には水分だけでなくさまざまな不純物が含まれています。それらを取り除き、蒸気の純度を保つ役割を果たすのがストレーナーです。
蒸気内に不純物が残った蒸気配管内を移動させると、熱交換機能の低下や配管内の弁に不純物が詰まることで機器が故障する原因になります。ストレーナーを設置しなくても稼働しますが、長期的には故障の原因になるため蒸気配管設計の際に必ず組み込んでください。
保温・板金工事
蒸気配管を設計する際は、蒸気の温度が低下するのを防止するために配管の保温工事を施さなければなりません。蒸気配管の保温には、グラスウールやロックウールとよばれる保温材が採用されるのが一般的です。蒸気配管に保温材を巻き付けて設置します。
保温材を設置した場合、保温材が劣化するのを防ぐための板金工事も同時におこなってください。
まとめ
蒸気配管を設置する際は緻密な計算と設置場所の構造に適した設計が欠かせません。そのためには、豊富な知識と蒸気配管の設計、設置の経験が重要です。
適切に設計されていない場合、全熱交換器の機能低下や故障、寿命を大幅に縮めるといった事態につながります。コストがかさむだけではありません。高温かつ高圧な蒸気が漏れ出した場合、事故につながる可能性もあります。
全熱交換器、そして蒸気配管の設置に関しては、豊富な知識と経験をもった専門家にご依頼ください。