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全熱交換器の図面の見方とは?図面の種類や記号について解説

全熱交換器の導入を検討する際に欠かせないのが、設置場所の調査や図面資料の確認です。

全熱交換器は、設置場所によって工事の方法が異なります。調査結果を元に、熱交換器の設置場所や配管の設置予定箇所を記したいくつもの図面が作成されます。この図面には特殊な記号が使われているため、知識がないと何が書かれているのか解読するのは困難です。

そこでこの記事では全熱交換器の設置にあたって作成される図面の種類のほか、図面を読み解くために必要な知識についてご説明します。

全熱交換器の図面の種類

全熱交換器の図面の種類

全熱交換器を設置する際には、数多くの図面を作成します。図面の種類は大きく次の2種類に分類することが可能です。

  • 基本設計図
  • 実施設計図面

基本設計図

基本設計図とは全熱交換器の設置における全体像を把握するために作成する図面です。

基本設計図は全熱交換器の導入が決定し、設置場所を検討する段階で作成します。

全熱交換器は設置する場所によって機器や配管の配置方法が大きく変動します。全熱交換器を設置する予定の箇所に対して、どのように機器や配管設備を配置することが可能かを大まかに図面に書き記し、実現可能性を確認するために作成する図面が基本設計図です。

実施設計図

実施設計図では基本設計図の記載内容を基に、設置する機器に必要な性能や配管のサイズといった細かな条件を記載した図面です。実施設計図はその内容によって、何枚もの図面にわけて作成します。

全熱交換器の設置にあたっては、熱量や風量、熱交換率について、綿密な計算をおこないます。これはもっとも効率よく換気しながら室温を保つことができる設置場所や最適な機器を選択するために欠かせません。

この計算によって導き出された機器の設置場所や、機器をつなぐ配管やダクト、接続部品について正確に記載する図面が実施設計図です。

実施設計図の代表的な図面には次のようなものがあります。

主な実施設計図

実施設計図の種類図面の記載内容
空調設備系統図ダクトと配管
空調設備ダクト系統図ダクト
空調設備配管系統図配管
空調設備平面図ダクトと配管
空調設備ダクト平面図ダクト
空調設備配管平面図配管

このほかにも、それぞれの全熱交換機器の機種ごとに取付図面や外形図面が付属します。実際の設置にあたっては、こういった図面を見ながら配管を接続することが大切です。

なお、ダクトと配管には次のような違いがあります。

ダクトと配管の違い

名称役割具体例
ダクト空調機器から室内へ空気を通す管配管に比べて工事が簡易的配管よりコストが安い給気ダクト排気ダクト排煙ダクト
配管液体やガスが通る管ダクトより強度が必要  冷却水管給水管

空調設備系統図

空調設備系統図は、全熱交換器の換気機器や熱交換機器を搭載した本体部分とダクト、配管をどのように接続するかを1枚の図面に凝縮して記載したものです。

系統図という名称の図面は、建物を縦に切った状態の断面図で記載されます。複数の階層がある建物でも、ダクトと配管が全体としてどのように構成されているかを一目で把握できる図面です。

空調設備ダクト系統図

空調設備ダクト系統図は、空気が通るダクトと全熱交換器の本体部分がどのように配置されるかに特化して記載された図面です。

全熱交換器は、熱移動の機器と空調機器が一体化した中央空調方式(もしくはセントラル空調方式)を採用した空調機器です。そのため全熱交換器の空調設備ダクト系統図には、空調機に接続したダクトを介して空気がどのようなルートで循環するかを記載します。

空調設備配管系統図

空調設備配管系統図は、全熱交換器の本体機器と水や蒸気といった液体が流れる配管の接続状況が記載された図面です。

空調設備平面図

空調設備配管系統図は全熱交換器の本体機器とダクト、配管の設置状況を、天井から見下ろした視点で記載した図面です。

なお平面図という名称の図面では、いずれも天井から居室全体を見下ろした形で図面を作成します。複数の階層がある建物では、各階ごとに図面の作成が必要です。ただ階層によって全熱交換器の設置場所が異なる場合や、配管の設置箇所が異なるケースもあります。

それぞれの階層の特徴に合わせた全熱交換器の設置計画を考える際や、実際に全熱交換器を設置する段階で欠かせない図面が、空調設備平面図です。

空調設備ダクト平面図

空調設備ダクト平面図には、各階層における全熱交換器の本体機器とダクトの設置位置や寸法が細かく記載されています。天井から見た平面の図面で、設置物の位置関係や寸歩まで性格に記載されているのが特徴です。

空調設備配管平面図

空調設備配管平面図は、各階層における全熱交換器本体と配管機器の設置位置や寸法を記載した図面です。設置する機器や配管の位置や寸法が、正確に記載されています。

全熱交換器の図面に記載する主な記号

全熱交換器をはじめとする空調設備の図面は情報量が多いため、略語や記号を多用します。

ここではよく使われる記号とその意味をご説明します。

全熱交換器の図面に使われる主な略語と意味

略語意味
EA全熱交換機器から屋外に空気を排出
OA屋外から全熱交換機器に空気を吸引
RA全熱交換機器に室内の空気を吸引
SA室内から全熱交換機器に空気を吸引
HEAR回転型全熱交換器
HEA静止型全熱交換器
HEU全熱交換ユニット

回転型全熱交換器とは、ファンと熱交換器が一体になったコンパクトな全熱交換器です。換気扇のように壁に埋め込むほか、室外機として屋外に設置するタイプが回転型全熱交換器にあたります。

静止型全熱交換器はファンと熱交換器がボックスに収納されたタイプです。ボックスごと天井に埋め込むほか、天井や壁面にあとから取り付けるタイプもあります。

全熱交換器の図面に使われる主な記号と意味

記号意味
ー C ー冷水の送り管
ー CR ー冷水の還り管
ー H ー温水送り管
ー HR ー温水還り管
ー CH ー冷温水送り管
ー CHR ー冷温水還り管

送り管とは全熱交換器の本体に向かって流す管を意味します。還(かえ)り管とはこの逆で、全熱交換器から排出される気体や液体を送り出す管です。

まとめ

全熱交換機まとめ

全熱交換器は室温の維持と室内換気を両立させるため、高い省エネ性能が期待できる換気機器です。

しかし、全熱交換器の換気性能を維持するためには、綿密な計算に基づいた機器の設置が欠かせません。また電気を含むほかの配線や機器の配置も考慮した設置計画も必要です。

全熱交換器の設置を検討する際は本体機器の性能はもちろんのこと、設置する業者も慎重に選定してください。全熱交換機は設置後の定期的なメンテナンスも必要なため、業者と信頼関係を構築できることが大切です。

業者を選定する際は設置の実績が豊富であることに加えて、図面の見方や細かな機器の機能について質問した際に、わかりやすい回答のできる業者をお選びください。