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初めてのキッチンカー、製作に失敗しないために知っておきたい要件は何か

「キッチンカー」と一口に言っても、様々な設備と車種と製作法があります。ここではキッチンカー開業に向け、初めてキッチンカーを製作する店主が知っておきたい製作の要件とポイントを解説します。

保健所の営業許可取得に必要な設備の要件

保健所の営業許可取得に必要な設備の要件

キッチンカーには安全で衛生な飲食物を提供するための調理設備が求められます。そこで保健所はキッチンカーの営業許可に必要な設備要件を定めています。その主なものは次の通りです。

(1)運転席と調理室の間仕切り

キッチンカーの調理室の衛生を保つため、運転席と調理室を完全間仕切りする必要があります。

(2)シンク

手洗い用のシンクと調理器具・食材洗浄用のシンク各1台の設置が必要です。シンクにはそれぞれ非接触型水栓も必要です。

(3)給排水タンク

手洗いと調理器具・食材洗浄用の水を給水する「給水タンク」と、洗浄後の汚水を溜める「排水タンク」の2つのタンク設置が必要です。キッチンカーの給排水タンク容量は、改正食品衛生法により40ℓ、80ℓ、200ℓの3タイプが定められており、どのタイプを設置するかは営業メニューや調理工程数により異なります。

(4)扉付き収納棚・収納ケース

食材、調理器具、食器、料理用包装材などの保管の衛生を保つため、扉付きの収納棚・収納ケース設置が必要です。

(5)換気扇

加熱調理をするキッチンカーの場合、調理台の周囲に油汚れが溜まりやすく、不衛生になりやすいので換気扇の設置が必要です。また換気扇の隙間から虫やゴミ・埃が入らないよう、換気扇カバーを取り付ける必要もあります。

(6)冷蔵・冷凍庫

冷蔵・冷凍保存を擁する食材や料理を扱うキッチンカーの場合は、冷蔵・冷凍庫の設置が必要です。

(7)照明設備

安全に調理をするため車内を十分な明るさに保つ照明設備が必要です。50ルクス以上等の照明基準を設けている保健所もあります。

(8)外部電源装置

キッチンカーは、給水タンクからシンクへの水汲み上げ電動ポンプ、換気扇、冷蔵・冷凍庫、照明などの設備が必要なので大量の電気を消費します。この消費を賄うため発電機等の外部電源装置設置が必要です。

(9)配膳カウンター

来店客への料理手渡しやレジ設置をするための配膳カウンターが必要です。カウンターはこれ以外に料理の包装、来店客に配るクーポン券・チラシ置き場などとしても使うので、広めのスペースが必要です。

また配膳カウンターの上には雨や直射日光を遮る張出しテントも必要です。

(10)密閉式ゴミ箱

調理室の衛生を保つため、食品廃棄物の臭いや水分の漏れを防ぐ密閉式ゴミ箱設置が必要です。非密閉式ゴミ箱は、悪臭発生や蝿等虫が侵入する原因になり、調理室の衛生を保てなくなります。

なおキッチンカーの場合、営業許可取得の設備要件とは別に、営業メニューにより必要な設備が異なってきます。その主なものとして、次が挙げられます。

 (1)コンロ……加熱調理をするキッチンカーの場合、プロパンガスコンロ、電気コンロ、カセットコンロなどが必要

 (2)電子レンジ……作り置きの料理を温めて配膳するキッチンカーは必要

 (3)炊飯器……チャーハン、カレー、丼物など米飯を使うキッチンカーは必要

 (4)フライヤー……唐揚げ、フライドポテトなど揚げ物を調理するキッチンカーは必要

 (5)茹で麵器……麺類を調理するキッチンカーは必要

 (6)コーヒーメーカー……淹れたてコーヒーを販売するキッチンカーは必要

 (7)ビールサーバー……生ビールを販売するキッチンカーは必要

キッチンカーの内装要件

キッチンカーの内装は、安全・衛生に調理をする条件として外装以上に重要と言われています。その要件として一般に次が挙げられます。

(1)床

 ・滑りにくく清掃しやすい床……調理の安全性が高まる

 ・色の濃い床……汚れが目立たない

 ・耐火性に優れた床……火を扱うキッチンカーは、火花が飛び散る確率が高い床の防火対策が不可欠

なお夏季の営業中は調理室内に熱がこもり、がかなり暑くなるので断熱性のある床材を使うと暑さ対策になるでしょう。

(2)壁と天井

壁と天井に難燃性のある断熱材を貼り付けます。暑さ対策+防火対策になります。

(3)窓と扉

配膳カウンターを取り付ける窓には、次のタイプがあります。

・引き戸・観音開き式……大きな窓を設置でき、安全で清潔な調理室をアピールできる

 ・跳ね上げ式……窓自体が雨や直射日光を遮るテント代わりになる

・シャッター式……営業準備が簡単

また後部扉は観音開きを採用すると、食材・備品の搬入に便利です。

キッチンカーの車体に用いる車種別のメリット・デメリット

キッチンカーの車体に用いる車種別のメリット・デメリット

キッチンカーの車体は、基本的に次の5車種が用いられます。

それぞれメリット・デメリットがあるので、自店の営業コンセプトや営業メニューと照らし合わせて選ぶ必要があります。

(1)軽トラック

小回りが利き、営業場所を確保しやすいのが特徴です。

■メリット

・キッチンカーの維持費が安い

・2オペ営業が可能なので、丁寧な接客ができる

・立ったままで調理できるので腰に負担がかからない

デメリット

 ・荷台に調理室を載せるので、そのための取付け設備費がかかる

・荷台に調理室を載せたままで車検を受けられないので、調理室の撤去・再積載が必要で、その度に経費が発生する

(2)軽バン

車高が低いので、来店客と同じ高さの目線で営業できるのが特徴です。

■メリット

・運転席と荷台が連なっているので、キッチンカーへの改造が容易

デメリット

・調理室が狭いので1オペ営業しかできず、丁寧な接客をできない可能性がある

・天井が低いので座ったままの調理になり、腰に負担がかかる

(3)普通車バン

広い調理室を確保できるので、2オペ営業が可能です。

■メリット

・軽バン同様、キッチンカーへの改造が容易

・2オペ営業が可能なので、丁寧な接客ができる

デメリット

・天井が低いので座ったままの調理になり、腰に負担がかかる

 ・キッチンカーの維持費が軽バンより高い

(4)1―2tトラック

様々な場所での営業に便利な車種です。遠隔地のイベント会場で営業する際も、高速道路を使って迅速に移動できます。

メリット

・広くて立ったまま作業できる調理室を積載できる

・車体が大きいので店名を大きく表示した外装を施せ、営業中も移動中も露出度を高められる

デメリット

・車体が大きいので調理室製作費と荷台への取付け設備費が高くなる

・車体が大きいので営業場所が制約される

(5)カーゴトレーラー

調理車とこれを牽引する自動車が別々なので見た目も存在感があり、営業場所で目立つのが特徴です。

メリット

 ・トレーラー前に幾つものテーブルと椅子を並べた大量接客が可能

 ・トレーラーだけを営業場所に設置できるので、複合・商業施設では固定店同様の常設営業が可能

デメリット

・自動車またはトレーラーの牽引登録が必要で、この手続きに手間と時間と経費がかかる

・車体が大きいので営業場所が制約される

キッチンカー製作法別のメリット・デメリット

キッチンカー製作法別のメリット・デメリット

キッチンカーの製作は、基本的に次の方法があります。

(1)キッチンカーの自作

自己所有車や購入した新車・中古車を店主が独力でキッチンカーに改造する方法です。

しかしデメリットは制作会社との打ち合わせ不足により起こる可能性があります。事前に予算や希望をしっかりと伝えることで、予算に沿った希望の通りのキッチンカーを製作して貰えることが多いです。また、ホームページに詳しく説明が載っている製作会社もあります。その為、製作依頼を出す前にホームページをしっかりとチェックしておくのも重要です。

■メリット

・製作費が安い

・思い通りのカスタマイズができる

デメリット

 ・一定レベル以上の自動車改造技術・改造用の工作機械と工具、改造作業場所が必要

 ・キッチンカー製作に時間(一般に6カ月前後)がかかる

 ・キッチンカーの安全性が低く、営業許可を取れない可能性がある

(2)キッチンカー製作会社の利用

購入した新車をキッチンカー製作会社でキッチンカーへ改造してもらう方法です。

■メリット

 ・製作に時間(一般に1―2カ月)がかからない

・カスタマイズしやすい

・キッチンカーの安全性が高い

デメリット

・改造に費用がかかる

・打合せの詰めが甘いと、自分が思い描いたキッチンカーと異なるリスクがある

(3)中古キッチンカーの購入

既存のキッチンカーを購入する方法です。

メリット

 ・(2)の方法より安く調達できる

 ・改造が不要なので、居抜きの形で直ぐ使用できる

デメリット

 ・調理室設備の故障リスクが高い

(4)リース

既存のキッチンカーをリース会社に購入してもらい、それを借用する方法です。

メリット

・短期間で調達できる

・初期投資を抑制できる

デメリット

・契約期間が長く、契約中の解約が困難なので、キッチンカー自前購入の資金的余裕ができてもリース車を使い続け、その借用料を払い続けなければならない

まとめ

キッチンカー製作には、保健所の営業許可取得に必要な調理設備、営業メニューにより要・不要になる設備、営業コンセプトと営業メニューに適した車体、そして製作法など様々な要件が絡んできます。これらの要件をベストの形で組み合わせないと、キッチンカー製作は失敗リスクが高まります。 リスクを避けるためには、用件ごとのチェックリストを作り、自分が選んだ各要件がベストな組合せになっているかを確認した上で、キッチンカー製作に取り掛かると良いでしょう。